明け方近くに、ユカは息をひきとった。
 眠るように静かな死だった。
 ユカは、やはりみんなと同じように墓所に埋葬された。
 埋葬にはユウとフジオミが立ち合った。
 マナは、墓所が見える離れた場所から、二人に気づかれぬようそっとそれを見ていた。
 全てが終わりユウとフジオミが去った後、マナは静かに歩みより、墓所へと向かった。
 墓所の一番端の、老人の墓の隣に、ユカの墓は作られていた。
 盛り上げられた新しい土。
 添えられた花。
 死はなんて呆気ないのだろう。
 そう感じずには、いられなかった。
 老人が死んで、まだ一月も経っていない。
 こんなに簡単に、死はやってくるのだ。
 特別なことでも何でもなく。
 いつか、自分も死ぬだろう。
 このユカのように、唐突に、逃れようもなく。
 だが、マナには、まだわからなかった。

 今ここにいる自分は、何なのだろう――

 今朝死んだ女の細胞のひとかけらから生み出されたクローン。
 生命の理から外れた作為の結果。
 それが、自分か。
 老人が言った、これが自分が何であるかということなのか。
「おじいちゃん、教えて。自分が何であるか見極めることに、どんな意味があるの? 意味はどこにあるの? どうやって納得すればいいの? こんなことなら、あたし、何も知らないほうがよかった。知らないままで、おじいちゃんとユウと、ずっと一緒にいたかった……」
 答える声はない。
 マナの視界が、涙で滲んだ。
 老人に会いたい。
 教えてほしい。

「ユウが好きなの。こんなに、好きなの。なのに、どうしていけないの……?」