にわかに現実に立ち返ったのは、自分を見据える瞳に気づいてだ。
同じ瞳が、自分を見つめていた。
まるで、鏡を覗くかの如く。
椅子に背をあずけたまま、うたた寝をしていたのだ。
でも、ただの夢ではない。
ただの夢ならば、こんなに胸は痛まない。
これは目の前の、ユカの深層意識に同調したためだ。
「…ぜ、泣…の?」
なぜ、泣くの。
初めて聞く声。
なんという、無垢な声。
声音さえ、自分と似て聞こえた。
「あなたのせいよ…あなたがあたしたちをこんなひどい目に合わせたのよ…どうして――どうして、こんなことしたの…? 何が望みだったの……教えてよ…」
こぼれる涙は後から後からシーツを濡らした。
ぎゅっと目をつぶり、マナは涙を堪えようとした。
不意に、頬に何かが触れた。
驚いて目を開ける。
そして、マナは自分に触れている、ユカの手を感じた。
「ユカ……?」
「なぜ…泣く、の…」
夢見るかのような虚ろな眼差し。
だが、触れる指は確かだ。
指先から、流れこむあたたかな感情も。
何の苦しみもない、ただ、愛しさにあふれた感情。
胸が痛い。


