「見つけた?」
 研究区の一画で、シイナは連絡を受けていた。
 すぐにディスプレイの右下に周辺の地図があらわれる。
 映し出されたのは、ドームからかなり北東にある廃墟群だ。
 比較的新しい年代のものだったので、資料として特殊コーティングされ、それ以上の崩壊を免れた一つである。
「ああ。なんてことなの。こんな遠くにいたなんて」
 フジオミをあの海で見失ってから、シイナはマナだけではなく、フジオミの捜索も行なわねばならなかった。
 海へ通じる川口で、二つの足跡を発見した。
 多分、これはマナとユウのものだ。
 そして、何か重いものを川から引きずった跡もあった。
 多分、マナとユウはフジオミも連れていったのだ。
 マナとともに、フジオミも生きていると確信して、シイナは安堵した。
 だが、今回のことでシイナはもう捜索をクローン任せにはできなかった。
 再度議会を召集し、捜索の全権を自分に移させた。
 廃墟群の捜索もあとわずかになって、ようやくユウ達の潜伏場所もわかったのだ。

「新たに編成しておいた捜索隊に準備しろと伝えなさい。管理区には話を通しておく。それから、ヘリの用意も。捜索隊の準備が出来次第出発する」

 シイナは通信を切り替え、管理区の保管を担当するクローンを呼び出した。
「ここにある武器で一番威力のある、しかも持続性の高い銃と弾薬をあるだけ用意しなさい。すぐに取りにくるはずだから」
 通信を終えると、シイナは立ち上がり、着替えるために自室へと向かった。
「攻撃の時間をなるべく長く保てるように、レーザーと交替で銃も使えばいい。力を使えばそれだけ疲労する。疲労が限界を越えるなら、力も出せなくなるはずよ」
 自分に納得させるように、シイナはひとりごちた。
 残されたユウのデータは全て頭に入っていた。
 ユウの力も全能ではありえないのだ。
 勝機はそこにある。

 今度こそ、終わりにしなければならない。