「マナ、駄目だ!!」
哀願するような悲鳴が、背中に響いた。
だが、マナは止まらなかった。
自分の予感が正しければ、あそこにいるのは――
マナは階段を駆け下り、地下への扉を開けた。
光量を絞り込んだ明かりが、足元の階段を暗闇に浮かび上がらせている。
駆けおりながら、心の何かが止めていた。
それ以上先へ進んではいけないと。
一番最後の扉は、あっけないほど簡単に開いた。
ロックさえ、されていなかった。
広い室内は、倉庫を改造したものなのだろう。
地下でありながら、高い天井は何だかがらんとしていた。
「――」
そして、マナは見た。
部屋の中央においてあるベッドに横たわる女の姿を。
マナの知らない機器が、ベッドの横に備え付けられ、作動していた。
剥出しの腕には点滴のためのチューブがのびていた。
そっと歩みを進めても、女はみじろぎすらしなかった。
規則正しい機械音に紛れて、かすれた吐息がもれていた。
マナは、見なければならなかった。
多分、年を重ねればそうなるであろう、自分自身の顔に齢を刻んだ、女を。
マナの瞳と、何処か虚ろな眼差しが、一方的に出会った。
それは、マナ自身。
たった一目で確信できる、マナのオリジナル。
ユカ=サカキ だった。
「…いや…」
マナの視界が淡く滲んだ。
次の瞬間。
絶叫が、その部屋に響いた。


