部屋へ戻ろうとしたフジオミが足音を聞きつけて振り返ると、角を曲がってこちらへ来るユウを見つける。
「ユウ。どこにいたんだ?」
「――外だ。マナは、どうした?」
 ユウの顔色は冴えない。
 フジオミには何かあったのかとすぐわかる。
「――喧嘩でもしたのかい?」
「そんなんじゃない」
 ユウはフジオミが嫌いだった。
 彼の前では、いつも自分は何もできない子供のように思える。
 出来得るなら、自分は彼になりたかった。
 フジオミであれば、何のためらいもなくマナとともにいられるのに。

「あんたは知ってるんだろ? 俺は、どうすればいい?」

 不意に縋るように問いかけられて、フジオミはユウを憐れんだ。
 可哀相なユウ。
 決して結ばれてはならない女を、愛した。
 わかっていても、愛さずにはいられない気持ちは、フジオミにも理解できる。
 だが、この恋は、決して実ってはいけないものだ。
「君にはもう、わかっているはずだ」
「――」
「マナには、果たさなければならない義務がある。それを放棄することはできない」
「でもっ、マナは俺といてくれるって言った!!」
「なら真実を話すといい。全てを知っても、マナが君といたいと言うのなら、僕は一人で帰ろう」
「――っ!!」

「じゃあ教えて、ユウ、フジオミ。あたしはクローンなの?」