その日の夕食も、ユウとマナの二人だけだった。
 フジオミは早々に部屋へとこもり、食事をとる様子を見せない。
 ユウの様子も変だった。いつもより口数も少なく、何だか不機嫌だった。
 後片付けも、気まずい空気が流れ、いつもの半分の時間で早々に終わってしまっった。
 黙って老人の部屋へと向かうユウ。
「ねえ、どうしたの、ユウ?」
「なんでもない」
 すぐに返ってくる返事が、なんでもなくないことぐらい触れなくてもわかった。
「おやすみ」
 短く言って、ユウはドアノブに手を伸ばし、ドアを開ける。中に入りかけるユウに、マナは追いすがる。
「待ってよ、ユウ。さっきから絶対変よ。何かあったんでしょう? 言ってよ」
「だから、何でもないんだ。俺が勝手に怒ってるだけなんだ。別に、マナには関係ないことだよ」
「嘘。なんでもなくないわ。だったら、あたしに話してくれるはずだもの。どうしてあたしを見ないの? あたしのこと嫌になった? 傍にいるの、邪魔?」
「違うっ!!」
 振り返って、けれどユウはすぐにマナから視線をそらした。
「――だってあんたは、フジオミと話をする方がいいんだろう?」
 不機嫌そうに、ユウが言う。
「一緒に話してるのを見たんだ。あいつは俺より大人だし、マナ、あいつといると楽しそうだ」
 マナは瞳を、瞬かせた。
 どうやら、ユウはマナがフジオミと話すのをいやがっているのだ。

(だって、フジオミは〈大人〉じゃない。おじいちゃんと話してても怒らないのに、どうしてフジオミだとだめなの?)

 心の中ではそう思ったが、実際にユウはいやがっている。