突然のエマージェンシー。

 この時、〈学習〉を終えたマナを迎えて、フジオミとシイナは研究区のレストルームでコーヒーを飲みながら休息を取っていた。
 初め、三人は驚いたものの、ちょっとしたミスだろうと深刻には考えなかった。
 だが、一分を過ぎてもやまない警報に、徐々に彼等の内に奇妙な不安が沸き上がる。
「何が起こったんだ?」
「わからない。事故かもしれない。ここから動かないほうがいいわ。管理区域に通信しましょう」
 シイナが、机上のコンソールで管理区域への通信を始める。
 数秒してスクリーンとは違う壁面の大きなモニターに、クローン体の職員の姿が現われる。
「何があったの?」
『侵入者です。何者かがラボの通風口から侵入しました』
 その耳慣れない言葉に、マナが息をのみ、フジオミが問い返す。
「侵入者? そんなものが、外から来たって言うのか。馬鹿なことを言わないでくれ」
 何処かのんびりした問いにも、無理はなかった。自分達を取り巻くこの世界に、外敵がいようはずもない。彼らはそれを事実として知っていたのだ。
『ほ、本当なんです。そちらに向かっています。早急に退避してください』
「動物じゃないのか。ある程度知能があれば、通風口に入り込むこともある」
「生体反応を確認したの!? 監視モニターが捕えたものをこっちにまわしなさい、はやく!!」
 苛立たしげにシイナが叫ぶ。
 モニターが切り変わり、侵入者の姿を映しだした。