「――フジオミ?」
呼ばれて、フジオミは我に返った。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。それよりマナ」
フジオミはマナに手を差し伸べる。
「帰ろう、ドームへ」
「――フジオミ」
「もう十分ここでは楽しんだろう? シイナが心配しているよ。帰ろう」
差し伸べられた手をとろうとし、しかし、マナは思い出したようにそれをやめる。
「でも、ユウが。ユウを独りにしてはいけないわ」
「連れていけばいい。シイナは僕が説得するよ。君はユウを説得すればいい」
「ユウを連れて?」
それは、マナにとって意外な提案だった。
ユウとともにドームへ帰る。
考えたこともなかった。
だが、言われてみると一番いい考えのようにも思えた。
「――そんなこと、本当にできると思う?」
「シイナなら心配いらないさ。君と僕とで頼めばきっと聞いてくれる」
こともなげなフジオミに、マナは小さく呟く。
「本当に? もしそれができたら、みんな幸せになれるのよね」
マナの言葉に、なぜかフジオミはやるせない気持ちをおぼえた。
幸せ。
幸福とは、一体何なのか。
何を基準に、誰を基準にそれを決定づけるのか。


