多分自分にも、その勇気がないのだ。
カタオカがあきらめの言葉を口にするその裏側で新しい命を望んでいるように、全てのしがらみを断ち切りたいと思いながら、そうしてしまうことをフジオミも恐れていた。
今までずっとそうであるように生きてきたのだ。
今更どうして変えられる。
変えたとしても、未来などない。
シイナは他人を愛せない女だ。
憎んでいる相手を今更愛せるとも思わない。
そして自分も、未来を繋ぐことだけを最優先とするように教育されてきた。
シイナを愛していても、それには逆らえない。
(だが、わからないのか、シイナ――?)
すでに未来など、ないことが。
もはや意味など、ないことが。
予定された絶望。
考えればわかることだ。
すでに扉は閉ざされている。
それでも、人を、どんな形でも残したいのなら簡単だ。
クローンを、残せばいい。
人が死んでも、クローンなら残せる。
寿命も短く、障害も多く出るだろうが、ただ存続させようとするのなら、最善の方法だ。
「だが、それではきっと、意味がないんだろうな――」


