廃墟に帰ったマナとユウは、すぐにフジオミをユウの部屋へと移した。
 すぐに使える部屋はユウとマナの部屋の他は老人のしかなかったのだが、そこを使うことをユウは許さなかった。
 今日のところはフジオミにはユウの部屋を与え、ユウは老人の部屋を使うということで、その場は収まった。
 ユウは意識のないフジオミの上着を脱がせると、それを壁に掛けた。
 マナの服と同じで特殊加工されているので、濡れても水を弾く。
 これならば表面の水分が乾けばすぐに着られる。替えの服は必要ないだろう。
 呼吸は穏やかだが、ショックが強かったらしい。
 頬を叩いても起きる気配はなかった。
 この分では明日になるまで目を覚まさないだろう。
 ベッドに寝かせると、すぐにユウは濡れた服を変え、部屋を出た。
 斜め向かいのマナの部屋に向かう。
「マナ。入っていいか」
 返事よりも先に、扉は開いた。
「ユウ、どうだった?」
「――心配ない。明日になれば目を覚ます。今はまだ、無理だ」
「そう――ああ、ごめんなさい。こんな所で立たせたままにして。入って、ユウ」
 ユウの手を引くと、マナは扉を閉じた。
 ユウはその手慣れた仕草に声をたてずに微笑った。
「? 何がおかしいの?」
「マナも、ここの生活になれたと思ってさ」
 マナはさっと顔を赤らめた。
「ユウの意地悪!!」
 来たばかりのときには、マナは自分で扉を開けるということを知らなかった。いつでも、自動で開いてくれるものと思い込み、じっと立ったままのときもあったのだ。
「ごめん、ごめん。マ――」
「ユウ!!」
 突然、ユウの膝が崩れた。
 とっさにマナは腕を伸ばしユウを捕まえたが、支えきれなかった。
 そのまましゃがみこむ。