彼等の社会を支える支柱となったのは学者達だった。
 生物学、遺伝子工学、人類学その他の専門的な知識を持つ者達が来たるべき時に備えて日本社会を根本から覆した。

 いわゆる、〈鎖国〉状態に入ったのである。

 科学技術の粋をこらしてドームという完全なる閉鎖空間を作り出し、外部からの接触をいっさい排除した。
 その当時では、己れのことに手いっぱいだった他国は、どこもこの小さな島国に関心を持たなかった。
 もちろん国内での反対もあったが、元来己れの国以外を排除しがちな状況であっただけに、強行突破されてしまえば、人々は意外にすんなりとその対策を受け入れ始めていった。
 ただ、前回と違うのはどの国との交渉も完全に断ったということだ。
 その頃までには、彼らはあらゆる弊害を克服していた。
 人口の減少に加えて、完全自給自足がなったこの小さな島国は、ただ自分達の血脈が永遠に生き続けることだけを考えればよかったのだ。