「淋しいわ、おじいちゃん。ユウもあたしから離れていったら、どうすればいいの? あたしも待ってればおじいちゃんのところに行ける?」
口に出してから、突然それが一番いいことのようにも思えた。
老人が戻ってきてくれないのなら、自分達が老人のところへ行けばいいのだ。
そこには老人が言ったように、きっとみんながいるのだろう。
ユウが失ってしまった、たくさんの愛しい人達が。
そこに行けば、ユウも自分も、淋しくはないだろう。
信じられないだろうが、昔この地にはたくさんの人がいたんだよ。たくさんの車が行き交い、夜には星よりも輝く光が地上を照らした。その時、きっと人間はこの世界で自分達にできないことはないだろうと思っていたに違いない。
この世界に比べれば、人はとても無力なものだ。だが、彼等はそれにとうとう気づかなかった。気づかないまま、過去において過ちを犯し、未来において償いを求める。
この美しい世界の中で、人間だけが、醜いのだよ。なぜなら、人間だけが〈産み〉の力を軽んじるからだ。生命を軽んじ、冒涜し続ける。その愚かな行為の結果が、今のこの世界なのだ。
いずれこの地上に、人間はただの一人もいなくなる。人だけがいないこの地上は、きっと永遠に近い時を過ごすだろう。全ての風が地上を優しく通り抜け、そこには私達が決して得られなかった全ての静穏がある。
目に浮かぶようだよ。その光景が。
それがきっと、この世界で最も美しい光景になるだろう――
きっとこの地上ではない別の場所に、みんな行くから、いなくなるのだ。
「でも、今は駄目よ。おじいちゃん、ユウを連れていかないで。行くなら、二人で行くから、ユウだけ連れていかないで」


