「アルテミアは、どこに行った!」

女は間髪をいれずに、僕にきいた。剣の切っ先を、僕の喉元に向けながら。

「ア、アルテミアは…」

僕とアルテミアが融合していることは、別に秘密ではなかった。

だけど、アルテミアと融合していると周りに知られたら…。

(こういうことになるかもしれないから…いやだったんだよなあ)

心の中でため息をついてるつもりが、実際にしてしまっていた。

「はあ〜」

僕のため息を聞いて、女は剣を下げた。

「相手は、悪魔…。どうやったから、知らんが…一般人を盾にして逃げたか」

妙に納得すると、女は僕に背を向けた。

「一般人に向ける剣はない。少年よ。早く立ち去るがよい。この辺りは、魔物が多い」

腰に着けた鞘に、剣を刺し戻すと、背筋を伸ばし歩き出した女の後ろ姿を目にして、僕は再び、人差し指で鼻の頭をかいた。

(う〜ん)

遠ざかっていく女の背中に、なぜか僕は…悩んでしまった。

天空の女神であるアルテミアに、怨みをいだいている人は多い。

しかし、彼女の強さは有名であるから、直接手を出したりする者はいない。

(この世界に、2○ゃんねるがあったら〜スレは荒れるだろうな)

僕はもう一度ため息をつくと、一歩前に出た。

「あのお〜。アルテミアに何か怨みがあるんですか?金を巻き上げられたとか、何か迷惑をかけられたとか」

後でアルテミアに怒られると確信しながら、僕は恐る恐る訊いた。

「!」

女の足が止まった。鋭い殺気が、女の背中から漂い出した。

僕は思わず、息を飲んだ。

振り返りざま、女は抜刀していた。

切っ先が喉元に、突き付けられた。

結構離れていたはずなのに、女は振り返り抜刀しながら、距離も詰めていた。

(は、速い!)

反応の速さに、僕は目を見開いた。

「貴様、何者だ?」

女は剣を突きだしながら、眉を寄せた。

「え…」

無意識の行動だったが、女の腹に銃に変わったチェンジ・ザ・ハートの銃口が触れていたからだ。