でもまさかあの羽純のダンナがDV男だったなんて、と、美夏はグラスを並べながら思う。
さっぱりしたスポーツマン、っていう感じだったのに、本当に人は見かけによらないものだ。確かに羽純はお嬢様育ちで天然だから、奥さんにしてみたら気がきかなくて、イラッとすることもあるかもしれないけど。
パジャマ姿に裸足の羽純が、生まれたばかりの息子の遊ちゃんだけを抱きしめて、血まみれでタクシーに乗って家に来た、と深夜に千紘から電話があった時は、腰が抜けるほど驚いた。出産、育児と慣れない家事できりきり舞いしている様子の羽純に遠慮して連絡もしにくくなり、行き来が途絶えていたため、そんなことになっていたとはちっとも聞かされてなかったから。
それからだろうか。あのふわふわと夢のようなことばかり言っていた羽純が変わったのは。
裁判をして、最終的には暴力のことを口外しない条件で、遊ちゃんの親権とそれなり養育費を手に入れたはず。ちょうどあの頃、羽純の両親はバブルが弾けたあおりでほとんど財産を失ったまま他界し、税金を払ったらほぼ無一文になったと言っていたから、ある意味ラッキーな展開だったのかもしれないが。
でもあれ以来、確かに羽純は変わってしまった。前は、シニカルだけど少女っぽい夢見がちなかわいらしさもあって、そのギャップを千紘と面白がったものだった。あんな嫌なことをストレートに言う子じゃなかったのに。なにかをまっすぐに信じるということがなくなって、何でも疑ってみるようになって…。
そう、聡と私の結婚を報告した時、妙なことを言い出したのも羽純だった。
