それ以来、月末になると、「給料も入ったし、そろそろ遠吠ますか」と幹事役が好きな千紘から電話がかかってきた。
最初は自分たちの、上から目線の強気な独身賛歌を笑うあう自虐ネタ披露の集まりだったはずの「遠吠えクラブ」の中身が、次第に愚痴や自嘲を吐き出す場に変わってきたのはいつからだろう。
そう、いつも聞き役が多かった羽純が、珍しく静かに話し始めたあの時からではなかったか。
「今日、たまたま食堂で向かいの席に座ってランチをいっしょに食べた新入社員の男の子に、真顔で聞かれたの。『柴崎さん、どうして結婚しなかったんですか?』って」
「過去形かい!」
美夏と千紘が同時に突っ込んだ。三人で大笑いしながら、最後はしんと黙り込んだ。あの直後ではなかったか、羽純がそれまで鼻にもひっかけていなかった同僚の英毅と、唐突にできちゃった結婚をしたのは。
そう、思えば羽純の結婚式の頃の千紘はまだスリムで颯爽としていた。急に太りだしたのはあの少し後、美夏が料理家のチーフアシスタントとなって忙しくなり、羽純の出産と、千紘自身のキャリアアップも重なり、それぞれが多忙で時間が合わせにくくなった。そして千紘は、仕事のストレスを解消するために家で深夜にひとり飲みするのが習慣になり、あれよあれよという間にどんどん横方向に膨らみ始めたのだった。
「太っているほうが貫禄がついて、いろんな交渉がしやすいわ」
と本人は気にもしていなかったけど。
最初は自分たちの、上から目線の強気な独身賛歌を笑うあう自虐ネタ披露の集まりだったはずの「遠吠えクラブ」の中身が、次第に愚痴や自嘲を吐き出す場に変わってきたのはいつからだろう。
そう、いつも聞き役が多かった羽純が、珍しく静かに話し始めたあの時からではなかったか。
「今日、たまたま食堂で向かいの席に座ってランチをいっしょに食べた新入社員の男の子に、真顔で聞かれたの。『柴崎さん、どうして結婚しなかったんですか?』って」
「過去形かい!」
美夏と千紘が同時に突っ込んだ。三人で大笑いしながら、最後はしんと黙り込んだ。あの直後ではなかったか、羽純がそれまで鼻にもひっかけていなかった同僚の英毅と、唐突にできちゃった結婚をしたのは。
そう、思えば羽純の結婚式の頃の千紘はまだスリムで颯爽としていた。急に太りだしたのはあの少し後、美夏が料理家のチーフアシスタントとなって忙しくなり、羽純の出産と、千紘自身のキャリアアップも重なり、それぞれが多忙で時間が合わせにくくなった。そして千紘は、仕事のストレスを解消するために家で深夜にひとり飲みするのが習慣になり、あれよあれよという間にどんどん横方向に膨らみ始めたのだった。
「太っているほうが貫禄がついて、いろんな交渉がしやすいわ」
と本人は気にもしていなかったけど。
