1984年4月上旬、東京、八王子リトルリーグに1人の少年が入団した、名前は佐藤晴久、父親はIT会社社長、父親と2人暮らし、10歳、選手(補欠含む)は14名、山下清太監督「佐藤くん、スパイク持ってないの?普通の靴だけど」晴久「うん、少年団の時も、普通の靴だったよ」山下監督「な」晴久「みんな!何も言わなかったから」中谷安昭「新人か?」伊藤健治郎「ポジションどこだろう?」山下監督「入団テストを行う」山下監督「佐藤君、ポジションはどこが出来る?」晴久「少年団の時、サードを中心にやってました、他も出来ます」山下監督「テストで合否決めるか?」まずはバッティングテスト、ピッチャー伊藤、打者晴久、3打席勝負、1打席目は場外ホームラン、伊藤「ウソ、俺のフォーク」池田祐輔「何」山下監督「ほぉ、高校野球でも軽くホームランだな」中谷「何だよ、あの飛距離、小学生かよ」2打席目は二塁打、3打席目は三塁打、伊藤「全部打たれた」山下監督「3打席目はフェンスギリギリだったがリトルリーグのルールではホームランだな」、次に守備(外野)、打席に池田が立ち、ボールを打ち込んでいく、晴久は巧みなダイビングキャッチなどで処理していく、山下監督「うまい、あのキャッチ、うちの守備では抜けてるぞ、ポジションは外野なのか?いや」池田「うまい」泉正典「誰だよあいつ、俺じゃあ取れないよ」山下監督「よし、合格だ、佐藤はサードで4番でいく」晴久「はい、投手やりたいけど、ヤッパサードでいいや、少年団で投手、向いてないって言われたし」中谷「オレは?」山下監督「中谷は3番」中谷「3番かまぁいいよ」池田「ん何か?気になる」池田「佐藤くん」晴久「はい」池田「ホントにサードだよな」晴久「うん、見てたでしょ」池田「あぁうまかったな、一番な、何か?隠してないか?」晴久「何も」、守備の練習で晴久が送球した時、泉がスピードガンを構えていた、晴久は気づかない、池田「泉、どうやった?」泉「小学4年の球じゃないな、相当速い、110km出てる」池田「なに110、マジかよ、しかも送球もいい、コントロールもかなり」池田「よし、確信が持てた」池田「佐藤」晴久「はい」池田「少年団でサードやってたのはホントらしいが、ホントは投手やりたいんだろ」晴久「いや、それは」、晴久がウジウジする、池田「うぅん」晴久「僕はサードでいいよ、投手、向いてないから」池田「さっき、球のスピード測ったよ、そしたら110km出てた、オレが受けた時は120近い感じだった、手もとでかなり伸びる感じがしたな、野手の投げる球じゃない」晴久「ごめんさい、少年団ではサードやってたけど、ホントは投手やりたかった」池田「正直に言ってくれればいいんだ」晴久「でも、僕、投手向いてないって少年団で言われたから、僕が投げたら負けちゃう」池田「逃げるな、やってみなきゃあ分からないだろ」晴久「嫌だ」池田「佐藤、まだ何か?隠してるだろ」晴久「何も」池田「俺は知ってるよ」晴久「そんな」池田「だってお前、入団して3日ぐらい経つけど、練習ずっと私服だもんな」晴久「いや、それは」泉「俺、少年団で去年の10月かな、他の学校の少年団と練習試合した時に、1人だけ、私服でプレーしていて、すごいうまいやついたな、ホームラン2本打っての大活躍だし」池田「やっぱりな」中谷「待てよ、私服で練習試合したら、退場に大ブーイングだろ」泉「いや、誰も文句言わなかった」池田「正しくは、何も言えなかっただろ、ようは上手いからって特別扱いされてたんだ、だから私服でのプレーもできた」晴久「うん、ごめんなさい」池田「でもな、リトルリーグでは、そんなんは通らないぜ、甘やかすことはしない、上手下手は関係ない、どんなにチームを助けることできてもだ」泉「へぇー、ユニフォーム着たことないんだ」小谷「あり得ねーな」池田「でも、今度多分、数日のうちに練習試合がある。その時はユニフォーム着てプレーしてもらうからな」晴久「うん」山下監督「ピンポーン、予定では18日のはずよ、詳しいことは後日話します」晴久「ユニフォームか」池田「中谷、打席、入ってくれ」中谷「あぁ」、晴久「どうせ、打たれるだろう」晴久「うわぁ、リードだぁ」池田「ピッチャー、初体験か、中谷は東京大会の決勝でも3打席で打率は7割ある。もし中谷を2打席抑えられれば、全国大会に通用する投手だぜ」、中谷「サードの新人か?何で?池田は佐藤に投手やらせようとしてんだ、でも事情は関係ないや、打ってやるさ」中谷に第1球目、インコース低め、山下監督「泉、スピードガン持ってきてくれ」田所「速いな」伊藤「何あの球速」2球目は低め一杯の中、中谷「なめるな」中谷がカット、3球目、低め一杯のインコース、中谷「紛らわしい」、打球は後ろへ、中谷「オレは4番だぞ、去年も東京大会の決勝でホームラン打ったんだから」4球目、真ん中のアウトコース、カット、中谷「変化球ないのか?」5球目、ど真ん中、中谷「真ん中、なめんな」、レフトフライ、中谷「クソ」中谷「なんか速いぞ」、2打席目、第1球目、真ん中のインコース、山下監督「ストライク」2球目、高めのアウトコース、中谷「打ちにくい」カット、3球目、高めの真ん中、カット、4球目、高めのインコース、中谷「こうもコントロール出来るわけねぇ、外れてる」山下監督「ストライーッ、アウト」中谷「ウソだろ」山下監督「ギリギリ入ってたよ」中谷「何だよ、あのコントロール」池田「間違いない、9分割コントロールだ、変化球なんか使わなくても全国で勝てる」、3打席目はレフトフライ、4打席目はショートゴロ、中谷「うそぉ、オレが4打席でノーヒットなんて、なにもんなんだ」中谷「佐藤は変化球ないのか?」池田「ないよ」中谷「なのに、オレ、シングルさぇ、打てなかった、何か?手もとで球が伸びてくるんだ、人によっては消えたと感じることすらあるだろ、すげえ打ちにくい」池田「でも、それだけでは4打席も中谷を抑えられない」中谷「あぁ球が手もとで伸びてくるといっても、1球目でタイミングさえ計れば、次はヒット、3球目ではホームランするからな、だが出来なかった、なんか?速い球でコース決められて、調整が出来なかった」池田「コントロールっていうヤツだよ」池田はストラックアウトという名称の1から9番までの的を準備した、池田「佐藤、この的を9枚打ち抜いてみろ」山下監督「ほぉ、普通なら9枚打ち抜くのに、15球以上は必要だがな」、すると晴久は、的から18m先に立った、泉「何か?遠くね」山下監督「シニア以上ではこの距離だよ、リトルはもっと短いけど」田所「無理だよ、遠すぎるよ」池田「ふん、どうかな」晴久は1球外したが、10球目で、9枚全てを打ち抜いた、中谷「ウソォ、信じらんねぇ」晴久「うん」伊藤「なに」中谷「シニア以上のルールだぜ、有り得ねぇ」山下監督「エース確定だな、東京大会は伊藤、全国は佐藤にするか」伊藤「すげえ」山下監督「泉、球速どうやった」百瀬信三「計ってたのか」池田「最初の1球目は110kmくらいかな、次は90kmは出てるな」泉「最低が85km、最高が110kmです」、山下監督「全力投球してみい?」山下監督は晴久の片手に鉄アレイを持たせ、晴久「うぁ」山下監督「113km」中谷「何4年生で113kmかよ、速いな、しかもストライク入ってるな」、山下監督「佐藤君、投手向いてるよ」晴久「俺が投手、いやそれは」伊藤「オレは」山下監督「伊藤君と佐藤君で試合を勝ち抜く、負担軽減な」晴久「いや、僕、自信が無くて」、池田「佐藤、コントロールすごいな」晴久「でも、でも、変化球がな、ないと勝てない」池田「なんか、ウジウジしてんな」、池田「落ち着け佐藤」晴久「池田君」池田は晴久の手を見ると、池田「相当練習したな、辛かったな」、小谷明弘「エースか?」晴久「僕が」