試合は同点(5−5)のまま、延長戦に突入した。野崎監督「こっちの先発、浜崎は疲れで、球威もコントロールも落ちてる、だけど、佐藤はあまり落ちてない、どういうことだ」池田「佐藤、疲れてないか?」晴久「ちょっと、疲れてきたよ」池田「向こうの先発はフラフラだな、次の回で仕掛けるぞ」、10回表、町田はヒット1本打つが、チャンス生かせず、池田「ヒット打たれたが、うまく後続を切れた」10回裏、無死、八王子の攻撃、斎藤がフォアボールで出塁、浜崎「クソ、しんどいな」春島「持ちこたえろ」泉と田所が三振、センターフライ、池田「試合を決める」池田はセンター前ヒット、晴久に打席が回ってきた、春島「コイツか?前の打席、投手かと思ってたら、場外ホームラン打ちやがったからな、慎重にな」浜崎「今度は打たせない」晴久は2球続けて空振り、晴久「よし」池田「あのスライダー、相当やな」小谷「あんなもん、打てへんぞ」泉「いや、打つよ」、春島「やつはスライダー打てない、何せ、ヤツにスライダー投げるのは今の2球が初めてだからな、何せ、浜崎のスライダーを1打席目で当てたヤツはシニアの全国大会の決勝レベルにもいないからな、2打席目で当てるのが精一杯、3打席目でようやくシングル打てるかの、もんだ」3球目、スライダー、晴久は打ち返し、浜崎「なに」春島「なバカな」、打球はライト前へ、春島「速く」、池田がホームにかえる、八王子のサヨナラ勝ち(6−5)、晴久「勝ったんだ」浜崎「やられたぜ」春島「たった、1打席で打たれちまったな、世の中広いな」野崎監督「負けたぜ、すごいもんが出てきたな」池田「すごいじゃねーか、勝ったじゃねーか」晴久「でも、ホームラン3回打たれた」池田「ったりーめーだろ、相手は全国レベルなんだから、上出来だよ」晴久「うん」池田「それに、向こうは3年を2人、2年を2人入れてきた、本気で来たからな」野崎監督「2年の浜崎が小4相手に体力負けとは?」晴久たちが球場から移動しようとした時、二宮悟史「晴久、ナイスピッチン、ナイスホームラン」晴久「あ二宮君」泉「あれ佐藤の友達?」池田「佐藤の少年団の時の投手やってた人さ」小谷「マジで」晴久「何で?二宮君がここに?練習試合で」池田「俺が呼んだ、今日、市営球場で町田シニア相手の練習試合で佐藤晴久が投げるから、見ると、面白いことあるって誘ったんだ」晴久「そんな」中谷「面白いって何?」池田「投手をやったことの無いやつが投手を散々バカにして、そいつがホームラン打たれて泣いているツラ見れるから、面白いってことさ」斎藤「ちょっと、それはやりすぎやないか?」晴久「いいんだ先輩、僕は二宮君に謝りたい二宮君はホームラン打たれても泣かなかったし、マウンドから逃げようとしたこともなかった、それなのに僕は泣いてしまって、その上、マウンドから逃げようとしてみんなを困らせた、ごめんなさい二宮君」二宮「いいよ、今日のピッチングすごかったよ、オレ、嬉しかった、やっぱり晴久はすごい投手だなって」晴久「でも、僕、ホームラン3本打たれて、泣いちゃった」、二宮「それでも、シニア相手に三振取った時にはかっこよかったよ頑張れよな、お前の球なら、変化球なくても、全国でも勝ち抜ける」晴久「二宮君」晴久は泣いていた、晴久「僕、また泣いちゃった」池田「何回泣いてんだ、コイツは」、バスの車内で、中谷「でも、泉、佐藤がスライダー打てるってよく分かったな、あのスライダー、浜崎がシニアの全国大会優勝チーム相手に投げて、3打席目でシングルにするのが精一杯な球だぜ、どう考えても打てないよな、いくら疲れていたとはいえ、スライダーのキレは悪くなかったし」泉「佐藤のバッティングを見ていて、打てるかもしれないと思った、打てるって保証はしてなかったよ」中谷「オレはあのスライダー、3打席でも打つのはきついな、よくて打ち上げるか詰まるかだよな」斎藤「でも、一番頑張ったのは佐藤だよな、ホームラン打ったしな」晴久「でも僕は相手にホームラン3回打たれた」小谷「そんなことねぇよ、よく踏ん張ったよ、さすがエース」伊藤「俺じゃあ、100点ぐらいいってたな、シニアを5点に抑えたんだから、すごいよ」池田「今日、佐藤と組んでみて、優しいけど、元サードやってたみたいやけど、やっぱり投手だな、投手という生き物は微妙だな」、晴久「ホームラン3本打たれて、大変だったけど、僕にとって、大きな一歩になった」池田「でも、ホームラン打たれて、マウンドで泣いたのは、まずかったな、佐藤」晴久「うん、僕!まだまだだけど、これから頑張る」泉「佐藤って泣き虫なんだな、ホームラン打たれてマウンドで泣いたって話。聞いたことないし見たこともなかったよ、今日、初めて見たな、佐藤が泣いてるとこ、かわいかったな」晴久「やめろって恥ずかしいって」帰宅後、晴久「今日、勝てた、明日から、僕がエースなんだ」翌日、池田「約束」晴久「うん僕、自信ついてきた」池田「それどころじゃねぇよ、すごすぎるぜ、マジで全国大会、優勝狙えるぜ」晴久「うん」池田「昨日の試合、打たれたのはオレのリードも悪かったし、自責点はお前にしかつかないのに、悪かったな」晴久「自責点って何?」池田「投手にだけつく、失点みたいなもんで、投手のミスで失点したものさ」晴久「昨日の試合は?」池田「自責点5、失点5」晴久「僕のせいで5点も取られたなんて、やっぱり僕」池田「全国シニア相手に自責点5なら上出来さ」、翌日、