冬の極寒の中

 2匹のペンギンが

 愛を交わした。

 半透明の卵が産まれ

 うっすらと

 小さな赤い心臓が

 ゆっくり、ゆっくり、

 鼓動しているのが見える。

 氷に囲まれ

 光の届かない世界で

 その赤い輝きは、

 ほのかな希望なのだ。




 2匹の周りには

 氷と同じ温度のペンギンが

 無数に倒れている。

 吹き荒れる

 ブリザードの中、

 冷えた身体を横たえた

 無数の屍は

 目を開けたまま

 時間と共に

 白く、白く、埋もれていく。

 2匹は身を寄せ

 赤い輝きを守る。

 その先に

 何も無かったとしても。