「あ…そろそろ空港行かなきゃ」
「そっか。お母さん今日帰るんだったね。カズくん、夜はあいてる?」

ーー夜か……今日は日本代表の試合があるんだけど……何かみんなに見られてる気がする。仕方ない…
「あぁ。学校終わる頃には帰ってきてるだろうし、大丈夫だよ」

「良かった~じゃあカズくん家行くね♪」
「うん。待ってる」

一樹は教室を出て溜め息を吐いた。

ーーオカン、DVDレコーダー買ってくんねーかな……
「婆ちゃんでもいいや……」


また溜め息を吐きながら、校門を抜けた。
「なぁにシケた面してんのよ。さっきの格好良かったわよ♪」

「オカン!?何でここに……ってか朝礼聴いてたのかよ!!」
「お義母さんが見ていけって言うから。あんた、本気でなるわけ?救世主に……」

「宣言しちまったんだ。死ぬ気でやるよ……」

母親は目に涙を溜め、一樹を抱きしめた。

「惚れたっ!!やっぱりあんた父さんの息子だよ~」

ーーまた始まった。
「惚れたんなら、俺にDVDレコーダー買って」
「それはダメ。お母さん、帰りの飛行機代しか持ってきてないの」

「本当に顔見に来ただけかよっ!もういいよ…さっさと空港行こうぜ」
「腕組もうか♪」

「ヤだよ!」
あからさまに悲しそうな顔を浮かべる母親を見て、頭を数回掻き、

「ほらよ……」
「やった♪カズちゃん最高」

ーー勝手にしてくれ……