一方その頃由紀の家では…

「由紀〜!!」
『おめでとう〜!!』

押し寄せてくるクラスメイトに荷物の整理をしていた由紀は押しつぶされていた。

「いたたた……ちょっとみんな…」
「由紀、やったな♪」

「ありがとうアケミ。みんなもありがとう。今日はよろしくね」
「任せてよ」
「今日は山ちゃんの店でお祝いだぁ!!」

アケミを中心に全員がテキパキと荷物を運び出す。そこに一樹も合流した。
「あら、羽田くん♪いらっしゃい。みんなで賑やかね」
「おはようございます。うるさくてすいません…先にお線香上げさせてください」
「ありがとう♪」

家に上がった一樹は仏間に向かい、仏壇に線香をあげ手を合わせた。
(おはようございます。朝から騒がしくてすいません……今日はご報告に参りました。昨日から由紀さんと同棲を始めました。卒業したら結婚する予定です。度々こうやって報告しに来るので認めてもらえると嬉しいです)

手を解き、立ち上がった一樹は由紀の部屋へと向かった。
「由紀、荷物まとめはどう?」
「うん♪だいたい終わったよ」
「そっか♪大きい家具は車で運んでもらえるから俺達が運ぶね」

一樹と源三は本棚を持ち上げ外に運んで行った。
「アケミ、あの人…」
「木工場の源さんだよ。今日は車出してもらったんだ」
「そうだったんだ」

あっという間に荷物を乗せ終わり、車は一樹の家へと向かった。
「羽田くん。由紀をよろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくお願いします。由紀、行こっか」
「うん♪」
「お姉ちゃん……お兄ちゃん…」
美希の小さな体が由紀を抱きしめる。

「美希?寂しくなっちゃった?」
「うん…」
「美希ちゃん、大丈夫だ♪遠く行くわけじゃ無いから、いつでも会えるよ」
美希の頭を撫でると、泣きそうだった美希の顔に笑顔が戻ってくる。

「やっと笑った♪かわいいね〜。いつでもおいで」
「うん♪」

「じゃあお母さん、美希、行ってきます♪」
『いってらっしゃい』

「お兄ちゃ〜ん!すぐ会いに行くからね〜!!」
遠くから美希に手を振り去っていった。

「良いお兄ちゃんが出来たね」
「うん♪かわいいって言われちゃった。お兄ちゃんもお姉ちゃんも優しくて大好き♪もう寂しくないよ」