それからの一樹は、放課後になるとすぐ体操着に着替え作業を進めている。
切っては組立てを繰り返し、そのまま部屋で寝てしまうときもあった。
そして1週間・・・1ヶ月と月日は流れ、徐々に進めていた組立ても完成の時を迎えていた。

日曜日...生徒は誰もいないこの日・・・
「完成...やっと終わったぁ~!!!!」
「一樹...お疲れさま。凄いじゃないか、これ全部作ったのかい?」
「婆ちゃん。時々由紀に手伝ってもらってね。俺、爺ちゃんみたいに出来たかな?」
「もちろんよ。ここにあるものから一樹の優しさが溢れているわ。あの人もきっと喜んでるわよ」
「良かった。町外れの木工場...あるでしょ?卒業したらそこで大工やろうと思うんだ」

祖母はびっくりしたような顔を浮かべると同時に孫の成長に喜んでいるようにも見えた。
「いいんじゃないかしら♪しっかり働いて尾崎さんを養っていかないとね」
「あぁ。一回由紀を連れてアメリカに行くよ。結婚も考えてるって両親に伝えなきゃ」
「その時は私も行くよ。尾崎さんのご家族も誘ってみんなで行きましょう」

一樹は笑顔を浮かべ、これからの未来を想像していた。
「よしっ!今日中にこれ教室に運んで明日みんなをびっくりさせてやろう♪」

一樹は教室にある机椅子をすべて作業部屋に運び、代わりに自分で作ったもののセッティングに取り掛かった。
教室はみるみる変貌を遂げ、おしゃれなバーカウンターにさまざまなデザインの机や椅子が並べられた。

携帯を取り出し、メッセージアプリを立ち上げた一樹。相手はもちろん由紀だった。
<完成したよ♪今から学校に見に来ない?一番最初に見せるのはやっぱり由紀だからね>
<ほんとに♪すぐ行くからちょっと待ってて>

一樹はカウンターのひとつの席に座り由紀を待っていた。