「一樹、部屋行こ♪」
「あぁ」
ーー由紀の部屋初めて入るな。

中は綺麗にしてあり、勉強机にテレビ、本棚にベッドといたって普通の部屋だが、一樹には眩しく感じられた。

「どうしたの?適当に座って」
「改めて彼女の部屋に居るんだって思ったらどうしたら良いか分かんなくて…」

「私だって初めてメイ達以外を部屋に呼んだんだから…」

一樹はカーペットが敷かれた上に座ると由紀と目が合った。
「一樹の話聞きたいな。麗華に来る前の事とか♪」
「そうだなぁ…俺が通ってた学校は共学でね、クラスに男が居るのも女が居るのも普通だったんだ。みんな仲良くてな、誰が好きだの、どこ遊び行くだのうるさいくらいだったな」

「向こうに彼女は居たの?」
「居ないよ。由紀が初めての彼女だよ」
「嬉しい♪」

「今までは親の仕事で転校も多かったから作ろうとも思わなかった。向こう出るとき一番の親友に言われたんだ。『もう転校にビビる事もないんだから彼女作れ』ってな」
「そうだったんだ」

「最初は彼女どころじゃなかったよ。知らないうちにみんなに与えてた恐怖を無くさなきゃって事ばかり考えてたし」
「私も最初はごめんね。一樹にヒドイ事言っちゃった」

「大丈夫だよ♪」
暗くなった由紀の頭を数回撫でて由紀の顔を見る。

「親友との約束もう一個あったんだ……彼女連れて国立でサッカー応援しに行くって♪一緒に行く?」
「行く。」
「良かった。約束守れそうだ」

「国立だけじゃないよ♪一樹とはいろんな所に行きたいの。まずは夏休みからいっぱい出掛けよう」
「あぁ♪」