思わず溜め息を吐いていると、後ろから笑い声が聞こえた。


「珍しいなー、テトラが寝坊なんて。また遅くまで練習してたのか?」


「わ、笑わないでくださいよ。エフ先輩。今日はちょっと、変な夢を見ちゃって……」


 テトラと呼ばれた少年の言葉に、エフと呼ばれた青年は「ん?」となる。


「夢?それはまた珍しい」


「そうなんです。滅多に見ないのに……それも、何だかすごく難しい夢で」


 テトラは夢の内容を思い出す。


(本当に、何だったんだ?すごく偉そうな女の子が、身分について勉強してて……それで……?っていうか、この国の身分ってそんな風になってたんだ)


 「変な夢」だと感じたのは、自分の知らない知識に関する夢だったからだ。


(それにあの女の子、何て呼ばれてた?聞き間違いじゃなきゃ、たしか……)


「おい、まだ寝ぼけてるのか?」


 色々考えていると、またまた後ろから声。


「い、いえ。……親方、今日は何だかイライラしてますね……?」


「え、どこが?この笑顔が、怒ってるようにみえるか?」