(そうだよね。自分でも信じられない話を、他人が信じるわけない)


 溜息を付いた後、テトラはその“信じられない話”を思い出す――。





            †





「よろしくね、“能力者”!」


 突然言葉を発した剣。当然のごとく、テトラは呆然とする。


「……ええと。どうなってるの?どこかにスピーカーでも付いてるの?」


「どうでしょう。この素晴らしい体に、付けられるところなんてある?」


「だ、だって……蜘蛛だって喋らないのに……って、君だって言ってたじゃん!」


「ボクは蜘蛛じゃないもん。まあ確かに、生きてる蜘蛛の方が理解できるか」


 ここで剣は真っ直ぐテトラを見る。目がどこにあるかなど分からないが、ジグザグには見ていないはずだ。


「ボクにはご主人様がいて、そのご主人様に魂をもらった。
その理由はただ1つ、君に頼み事をしに行き、その頼みごとの補助をするため」