私は走って仁を追い越し振り返った。


「……なに?」


“ゴクッ”っと生唾を飲む。


「どした?」


「あ……」



「あ?」



「ありが…とう。」


「……。」



多分、今私の顔は真っ赤だろうな。


「コレ嬉しかった、すごく。」


仁も私につられて気まずそうに俯く。


「……別に。路上の外人にしつこく呼び止められて仕方なく買っただけだし。」


またまた、素直じゃないんだから。


でも、その不器用なところも・・・。


仁は足早に去って行った。


本当はさっき好きって言おうと思った。


でも、やっぱり私にはこれが精一杯の愛情表現。


あぁ~、好きって言うタイミングってこんなに難しかったのかな……。


私はまるで中学生が初恋をした時のように愛を伝える難しさにもがき苦しんでいる。



だけどそのぎこちない空気がやけに新鮮で幸せだった。