「本当に解散しちゃうんですかねぇ……。」


残念そうに若菜ちゃんが言う。


「……。」


それを聞いて急に不安になった。


せっかくあんなにいい曲ができたのに、解散なんて…しないよね?


その日一日中、仁の事を考えて落ち着かなかった。


「小原さん!」


「……。」


「こ は らさん!!」


ハッ……


「あっはいっ!」


私のデスクの前で仁王立ちして睨みを利かす部長。


やばいやばい。


今完全に私上の空だった。


「これ、商品開発部に届けてくれ!」


「……はっはい!」


差し出された資料を受け取ると、部長の顔色を伺いつつ席を立った。


危なかったぁ……


最近ボーっとしてる事が多いから目つけられてるのかもなぁ。


はぁ…開発部か。



「ん…!?」



エレベーターに乗ってから気がついた。



『開発部!?』



私、弘人のいる部署に向かってるの!?


むっ無理無理無理!!


どっどどうしよう~。


あの遊園地以来、顔を合わせてなかったのに、今更会いたくないよ~!


あっ、代わりに若菜ちゃんに持って行ってもらおう!


よし、もう一回上に……って、そういえば今若菜ちゃん会議に出てるんだ~!


もお、使えないんだから~!!


そんなこんなしてる間に、エレベーターは目的の階に着き、扉はゆっくり開いた。


わぁ~どうしよ!


エレベーターを待っていた人が不思議そうにこっちをみている。


「降りないんですか?」


「おっ…降ります。」


仕方なく重い足取りでエレベーターを降りた。


しっ仕方ない!ここまで来たら引き下がれない。


妙なプライドを胸に、開発部のオフィスのドアに手をかけた。