―8時過ぎ



家の前にタクシーを呼び、病院へ向かう。



もちろん、あの花屋でブルースターを買う事も今では私の日課になっていた。



仁が入院して5日が過ぎて、病院の正面玄関も少しだけど落ち着きを取り戻していた。



ちらほらいる報道陣の間を擦り抜け、病室へと足を早めた。



「…おっ。」



病室の前まで来た私は、思わず足を止める。



病室の前では当然ならが例のボディーガードが今日も仁王立ちしている。



ビクビクしながら一歩一歩近づく。



“ガラッ”



その時、病室のドアが開いて中からケンチャンが顔を出した。



「おっ!来た来た。」



ケンチャンは私に気付きニッコリ微笑む。



私はそのボディーガードの男性を気にしつつケンチャンに近づいた。



「…あの」



「さっ!入って。」



えっ…あっ。



ケンチャンに背中を押され恐る恐る足を進める。



男性は気まずそうにまたそっぽを向いている。



私はペコッと頭を下げてから病室へ入った。



「もう来る頃かなと思ってたよ。」



ドアを閉めながらケンチャンが言った。



「……あっうん。」



ベッドの仁に目を向けると、今日も気持ちのよさそうな寝顔…



まるで本当にただ寝てるみたい。



ツンツンと頬を突けば起きそうな感じだ。



「今日も安定してるね…」


「ん?あぁ、本当いつまで眠りほうけてるつもりなんだかな。」



隣に腰掛けながらケンチャンがそう言った。



「でも、今日は一日ゆっくりしていきなよ!なんにも気にする事ないから。」



「……うん。」



「俺ちょっと飲み物買ってくるわ!」



ケンチャンは気を遣ったようにそう言って病室を出て行った。