翌日、朝早くから鳴り響く携帯に寝ぼけまなこで手を伸ばす。



“チャララ…ピッ”



「…っ、はぁい。」



《もしもし、千秋ちゃん?》



電話の声はケンチャンだった。



「あっケンチャン?おはよっ、こんな朝早くどうしたの?」



《おはよ!実はさぁ、今朝から佐田さんが仕事でこっち離れてるらしくて、帰るのは明後日になるらしいんだ。》



「えっ…!?」



じっじゃあ…っ



《そう!今日と明日は時間気にせずゆっくり仁と会えるよ!》



やっ…



やったぁ!!



《それ早く伝えたくてさ!ごめんね、朝早くから。…寝てたよね?》



「うううん!わざわざありがとう、知らせてくれて。」



《うん!何時にくる?》



「えっとねー、今から用意してすぐに出るから…」



私は9時に病院へ行く約束をして電話を切った。



嬉しい。



しばらくなかった仁とゆっくり過ごす時間…



何も話せなくても、ただそばに居られればいい。



滅多に入らない朝風呂に入り、ローズの香りのするボディーソープで体を洗った。



鏡に映る私の顔は、まるで水を得た魚のようにキラキラしている。



早く会いたい!!



綺麗に整えたネイルに淡いピンクのマニキュアを塗り、香水もつけた。



初デートでもないのに。



見てなどもらえないのに。


“仁に会える”



ただそれだけで私は年甲斐もなく恋する乙女に早変わり。