でもきっとそれをすれば、私の存在がバレる事は間違いない。そうなれば、また記事に書かれて…



あることないこと書かれて…


でも、そんな事より一番心に引っ掛かっているのは佐田さんに言われた一言だった。



“アンタがジンのそばにいるとろくなことがないのよ!”


あの言葉がずっしり私の胸に刺さっていて、私の足を止めてしまっている。


「だからなんやねん!」



えっ…!



突然、廊下に響く桜井君の怒鳴り声に一瞬空気が凍りつく。



「ど…どうし…たの?」



桜井君は握りこぶしを震わせている。



私も若菜ちゃんもただ驚いて彼に目を向けた。



「……そんなっ、そんなもんなんかっ!」



「…えっ?」



「先輩の仁への気持ちはそんなもんなんかっ!?……そんな報道陣がどうとかっボディーガードがおるからとかっ、そんな事で止まってしまう程度のもんなんか!……俺にあんなに泣いて、仁じゃないとあかんって泣いたのに……結局そんなもんか!」



桜井君…



「俺はなんのために引いてん!…必死で気持ち殺してっ…先輩言ったやん!俺が先輩を思うよりも自分は仁を想ってるって言ってたやん!」


グサッと胸に重い何かが刺さった。



「…俺はっ……俺やったら、いつでもどこでも何があっても…先輩に何かあったらブッ飛んで行く。」



え…



「後先なんか考えんと、ブッ飛んで行く!」



その鋭い眼差しに



なんの嘘もなかった…。



「せっ…ぱい、先輩、そうだよ…」



放心状態の私の隣で、若菜ちゃんも口を開いた。



「もう…いいじゃん!記事に何書かようと、世間がなんと言おうと放っておけば……、私たちはちゃんと真実をわかってますから。」



若菜ちゃん…



「…きっと待ってますよ、仁。」



ガシッと肩を揺さぶられた。



「そうやで…先輩。」



涙に濡れる私の顔を覗き込んで、二人は強く言葉を投げた。