翌朝、重い体を奮い起こして仕事に向かった。


いつまでも休むわけに行かないし。



電話に乗ると正面のおじさんが広げている新聞に、デカデカとジンの記事が載っている。


《ジン 依然意識不明…》


どこの新聞も書かれていることは同じだ…



それを見ながら女子高生達がジンの話しをしているのが耳に入った。



“ジンが事故に遭ったなんてびっくりだよね。”



“あたしの友達で、ファンクラブに入ってる子がいるんだけど、もう号泣だよー。”


“噂の彼女に会いに行く途中だったんでしょ?なんか、かわいそうだよねー”



それを聞いて、やっぱりこれは現実なんだと実感した。



会社に着くと、オフィスの入口で桜井君と若菜ちゃんが立ち話をしていた。



二人は私に気付き、一瞬動きを止める。



「……はよ。」



「なんで電話でえへんねんっ!!」



第一声でそう声を荒げながら、桜井君が私に近づいて来た。


「……ごめん。心配かけて」



力無くそう言うと、彼は深く溜息をつく。



「ハァー…。でもよかった…想像してたよりは元気そうで。」



笑い返す気力もない。



「先輩仁は!?どうなんですか!?」



声を大にして若菜ちゃんがそう言った。



「まだ、意識は……」



小さく首を横に振る。



「仕事なんか来てる場合ちゃうやろっ!」



「……え」



「こっちはなんとか適当に話し合わせておくからっ…行って来いって先輩!」



桜井君は私の肩を揺らしてそう言った。



「……今は行けないよ。」


「なんでですか!?」



半分泣き顔の若菜ちゃんが私の顔を覗き込む。



「病院にもすごい報道陣が詰め掛けててね……それに、事務所がボディーガードまで用意しててっ……」



無意識に笑っていた。


笑うしかない状態……


「…参っちゃった。」



私だって会いたい…



そばにいて看病したい…