キミのとなり。

「失礼ですが、…千秋さんですか?」



「えっ?!…あっ、はい。」


「やっぱり、いつだったかここにいらっしゃいましたよね?」



うそっ



覚えてくれてるの!?



「あっはい!凄いですね!お客の顔、一人一人覚えてるんですね~」



グラスを丁寧に拭きながららマスターは答える。



「…あっいえ、お宅様は特別ですよ。」



思わず手を止めた。



「え?」



特別?



「ジンの恋人だからね。」


マスターは身を乗り出してなぜか小声になる。



「……へっ!?あっ…いえ、恋人っていうか……なんていうか~」



顔面が真っ赤になった。



「あいつら昔からここでよく集まって飲んでたんですよ。まさか、こんなビッグになるとはねっ…ははっ」



あっそっか…



マスターは、仁たちをずっと昔から見て来たんだ。



昔の仁はどんなだったんだろう。



聞いてみたいな…。



「ここに来ては、メンバーとあなたの事話して盛り上がってましたよ。」



「私の事?」



「不器用だとか…泣き虫だとか…」



へっ!?



なによそれ!半分悪口じゃない!



もぉー!!むかつく!



「ジンは、あなたの事話してる時が1番楽しそうだった。……あんな笑顔なかなか見たことなかったよ。」


「……。」



嬉しいんだか、なんだか。


「あっ今日の待ち合わせはジンと?」



「あっ…はい。」



カウンターの向こうにある時計に目をやる。



「8時に待ち合わせなんですけどね…」



時刻は8時30分を指していた。



「過ぎてるねぇ。」



「……きっと、仕事が長引いてるんだと思います。」


早く会いたい気持ちを押し殺して笑った。



マスターもそれにつられるように笑顔でこう言った。


「きっともうすぐ来るよ」


優しいマスターの言葉に 小さく頷いた。