帰りの電車に揺られながら隣の若菜ちゃんが呟いた。


「けど…やっぱかっこよかったなぁードラム叩くケンチャン…。」



「……そういえば、ケンチャンとはあれから会ったりしたの?」



「いえ!メールはしてるんですけど会ってはないですよ。ってか、会えないし。」



「え?あ……っやっぱマスコミの目とか気になるし?」



「まぁーそれもあるけど…1番は先輩達の事ですよ!」


え?



「あっ別に先輩のせいで会えないってんじゃないですよ!?ケンチャンがねっ……見届けてからって。」



見届ける…?



私は隣で首を傾げた。



「先輩と仁がちゃんと幸せになるのを見届けてからしか、自分の恋に一生懸命になれそうにないって。」



そう話す若菜ちゃんの顔は何故か前とは違い笑顔に満ちていた。



「ごめんね…また辛い思いさせてるね。」



その笑顔に恐る恐るそう投げ掛けた。



「何言ってるんですか~!私もケンチャンと同じ考えですよ?先輩達がうまくいくのを見届けてからでないと、なんかちゃんとケンチャンと向き合えないような気がして……」



若菜ちゃん…



「それに会えなくても平気なんです!」



「ケンチャンの気持ちがちゃんと自分にあるっていうだけでもう毎日ハッピーなんですっ!」



若菜ちゃん。



「もうすぐですね、誕生日!」



「……あっうん。」




そうだ…



あと4日我慢すれば、仁に会える!!



ハァーそう考えただけで、私も気分がハッピーになれるよ。



恋って不思議……。