「1回だけですよ、まだ…。」


何が!?


何が一回なの?


「…フッそんな……、そんな険しい顔しないでくださいよぉー。」



彼女は馬鹿にしたようにそう言った。


「小原さん、なんで神田さんに体許してあげないんですか?」


我慢していた気持ちが一気に噴き出す。


「ほっといてよ!人の彼氏寝取ったあんたに話す義理はないわ!」


「寝取ったなんて人聞きの悪い。」


やけに落ち着いたその態度が余計に腹立たしかった。


「実際そうじゃない!」


「形的にはそうかもしれないけど……」


彼女はゆっくり私の前を通り過ぎて、振り向き様にこう言った。



「あなたじゃ癒やせない部分を、私が癒してあげただけですよ。」


“バタンッ”


勝ち誇った顔で彼女はドアを閉め、去って行った。


一人トイレの鏡の前で立ち尽くす。



何も言い返せない自分が情けなかった。