《来月楽しみだね!》



「うん!早く…会いたいよ。」



――それから、しばらく仁に会えない日が続いた。



お昼の芸能ニュースでは、まだ“ジン、素人OLとの引き裂かれた愛”と題されて、よく特集が組まれている。



私の周りでマスコミを見掛ける事はまだないけど、相変わらず仁の周りには終始マスコミが動いているらしい……



そんなある日―



知らない番号からの電話が入った。



予感はしていたけど、その声を聞いた瞬間にそれが誰だかわかった。



《今夜、8時に○○に来てちょうだい。》



こちらの都合を確認するでもなく、電話は一方的に切れた。



久しぶりに聞く不機嫌そうな佐田さんの声に、一瞬怯む私。



何を言われるか大体察しが付く。


だけど……



ここで逃げるわけにはいかないんだ。



自分の幸せを手にするためには、自分で道を切り開かなければいけないんだから。


―7時過ぎ



残業を終えて、佐田さんに言われた場所へ向かう為タクシーに乗り込む。



「○○まで。」



「はい。」



タクシーはゆっくり走り出した。



深呼吸をゆっくり繰り返す。



大丈夫……



何を言われても、気持ちは変わらない。



車窓に写った自分の顔は、堅い決意で満ち溢れていた。



一足先に、その場所に着いた私はまだ佐田さんが来ていない事を確認してゆっくり奥のテーブルに座る。



はぁ…緊張するなぁ。



目の前の氷水に手を伸ばし、ぐいっと一気飲みした。


しばらくして、入口からただならぬ威圧感が漂い始めた。



恐る恐る目をやると、黒いサングラスをしたパンツスーツの女性がこちらに気付きカツカツとヒールの音を立てながら近づいて来るのが見えた。



“バクバクバク…”



思わず唾を飲む。



そしてその人が、私の席の前で立ち止まりこう言った。