「元気だった?」



「あっうん……。」



「この前の、アレ驚いただろ?」



「……うん、正直目を疑った。」




「だよねっ…俺も最初話し聞いた時はびっくりしたよ、だってあれって千秋ちゃんの元彼の結婚式だろ?」



「……聞いたんだ。」



「あいつ、当日の仕事延期してもらってさー協力してくれって俺たちに頭下げて。」



え…仁が……?



「あいつさ、千秋ちゃんと付き合って本当に変わったんだ。」



「えっ?」



「ほら、俺学生の頃から知ってるじゃん。でも、昔の仁はさー、仲間内からも恐れられるぐらい…こう、威圧感があって。」



ケンチャンはグラス片手に昔を思い出していた。



「誰にも心開かないっていうか……唯一、打ち込んでたのがバンド活動だったんだ。」



「唄うことで何かを伝えたいって……不器用なあいつなりの表現方法だったんだろうな。」



「けどっ……マイクロシティーに呼ばれた時さ、久々にあいつと会って、なんか変わったなぁーって感じたんだ。」


「仁が?」



「まぁ、相変わらず無愛想ではあったけど……トゲが抜けたみたいな、そんな気がしたんだ。」



いつか、晶子もそんな事を言っていたな。



「千秋ちゃんの影響だったんだよね。」



「……やっ、私は別に、」


「本当、好きだったんだよあいつ……」



“ドキッ…”



「……式でも言ってたけどさ、仁の中ではまだ何も変わってないんだよ。」



思わず隣にいるケンチャンに見入った。



「じゃなかったら、どうしても恩返しがしたいって言ってさ、プライド捨てて元彼の前で唄うなんて事、できないよ。」



「ケンチャン……」



「千秋ちゃんの存在が、あいつが書く歌詞や歌声や、それから心も……優しくしたんだよ?」



泣きそうになった。