「えっ…ないって……、」


コクンッと一度頷いた。



「えっだって…っ」



桜井君はそう言いかけて口を塞いだ。



全てを悟った桜井君はゆっくり体を起こし、ベッドの上であぐらをかいだ。



「そっか……。そうなんか。」



呆然と頭を掻いて、そう呟いた。



私はまだ顔の赤みが取れないまま、体を起こした。



二人無言のままベッドの上で気まずい空気……。



すると、ゆっくりまた正面から抱きしめられた。




「ほんなら、大事にしなあかんな。」



桜井君は力強く…そして、優しい声でそう言ってくれた。



正直に嬉しかった。



桜井君は私のほてった頬っぺたにチュッと軽くキスをして立ち上がる。



「ほな、狼は撤収しますわ!」



「えっ…」



そう言って立ち上がり、テーブルに置いた財布と携帯をポケットにしまう。



もしかして…



25歳にもなってバージンだなんて知って、ちょっと引いてる!?



すごく不安になった。



私は俯いたまま、玄関へ向かう彼の背中を追って歩いた。



嫌われたかな。



得体の知れない不安が込み上げてくる。



スニーカーを履いた桜井君が振り返る。



「じゃー行くな!」



そう言って私の頭に手を伸ばしヨシヨシと撫でた。



「かわいい千秋ちゃん、また明日!」



……はっ!?



またニッと白い歯を見せると、嬉しそうな笑顔を残し去って行った。



なんかっ、逆に喜んでない!?



余計な心配だったな……



でも何で私……



不安になったのかな。