YESの返事をした今も、正直頭には仁の顔が浮かんでくる。


だけど、彼となら…


桜井君となら、少しづつその回数も減らせられる気がした。


この前言ってくれた言葉…


“俺が先輩の彼氏になって、毎日一緒にいて仁の事思い出す暇もないくらい一緒にいて、いつか先輩の全てになってみせる”



あの言葉を信じたい。



これからどんな未来が待ってるのか想像もつかない。



不安と期待で胸はいっぱいだけど、歩くしかないんだ。


振り返ったり立ち止まったりするわけにいかない。


その日の夜――


晶子に報告の電話をした。


案の定、最初は驚いて声もでないという感じだった。


弘人と同じ台詞を言われた。


“仁さんを忘れる為に、好きでもない人と付き合うなんて…”


私は改めて実感したんだ。


そんな風に周りから見られる程、仁が好きだったんだと。



みんなが私には仁しかいないと思っていたんだと。


でも……



いつまでもそれにしがみついてたらダメなんだ。



私達、なんの為に別れたのかわからなくなっちゃう。


だから晶子にこう言った。


“桜井君の事好きになりかけてる。”



晶子はまた言葉を失った。


“そんな不確かな…不安定な気持ち、いつ失くなるかわかんないよ。”



そう返ってきた。



でも、私は決めたんだ。



この時の直感を大切にしようと…



晶子からしたら馬鹿げた事に見えても、



応援してもらえなくても



私は、彼を……



桜井君に傾きかけた自分を


信じよう。