――翌朝



「先輩~!」



会社のロビーで後ろから若菜ちゃんの元気な声がした。



「おはよー」



「おはようございます!どうですか?新居少しは片付きました?」



「……あぁー…」



まだ前のマンションに越した事言ってないんだった。


「落ち着いたら呼んでくださいね。」



「……あぁーうん、そのうち。」



すると、更に後ろから声がした。



「先輩!」



振り返ると、桜井君が手を振って歩いて来た。



「はようございます!」



「あっおはっ…」



「おはよ~!!」



え?



私を押し退けて満面の笑みで前へ出る若菜ちゃん。



「あぁ……おはよー。」



なんで若菜ちゃんにはタメ口!?



「今日はこの間に増して爽やかだね~なんかいい事あった?」



若菜ちゃんは桜井君のお腹の辺りを肘で突く。



二度目だとは思えない程親しげ……。



「えっ…あぁ~まぁ。」



ちらっと私を見る。



思わず目を反らした。



「あっそうだ、桜井君……だっけ?君さぁ…」



潤んだ瞳…



嫌な予感。



「彼女いる!?」



はぁ!?



更に体をくねくねさせ、桜井君に擦り寄る。



「え!?あっ…いや~」



めちゃめちゃ困ってるじゃないよ~!



離れなさいって!!



若菜ちゃんは得意の上目使いで桜井君の答えを待っている。



桜井君はポリポリと頭を掻きながら私に助けを求める。



「…今は~いてないって言うか~」



「うそっ本当!?フリー?」



ありゃりゃ。



この前“ケンチャンが~”って泣いてたのは何だったんだよ!



相変わらず切り替え早っ!!