仁は力無く掴んでいた手を離した。



「……。」



その映像が、まるでスローモーションのように何度も何度も頭に焼き付いて蘇った。



「……そうか。」



仁は俯いて、ただそう言った。



胸が張り裂ける痛みを感じた。



「……幸せんなれよ。」



“ズキッ…”



仁はバイクに戻るとメットを被り、エンジンをかけた。



仁……



仁……



もう………



会えない?




このまま別れたら……




もう……



二度と会えないかな…




私の中で優柔不断なもう一人の私がもがき苦しんでいる。



行かないでっ…



行かせちゃダメ…



そんなもう一人の煮え切らない私を必死に押さえ付けた。



仁は少しこちらを振り返り軽く手を上げた。



ヘルメットの奥でどんな顔をしているのかわからなかった。



「じっ……」



“ブウィーーン!”



仁はバイクを走らせ帰って行った。



どんどん小さくなる背中を



ただ立ち尽くして見送るしかできなかった。



後悔の念が今更押し寄せてくる。




どうしようもないな、



私。