今までのバンドとは、打って変わってしっとりとしたメロディ。



あいつがギターを弾きながらマイクの前に立って唄っている。



正直、驚いた。



なんて優しい声……。



みんな聴き入る様にジンを見つめている。



私はあいつの唄うそのせつない音楽に、いつの間にか引き込まれていたんだ。



スポットライトを浴びてステージで唄うあいつの姿は、まるで別人のようだった。


いつもの無愛想で無口なあいつからは想像もできない姿。


演奏が終わると、会場がまた騒ぎ出す。



「ジーン!!」



「キャー!」



黄色い声援が会場を飛び交う。


本当にすごい人気だな。



するとジンは、マイクを手に持ち話し出した。


『えー、今日は俺達のライブに来てくれてありがとう。』



あっ、あいつが悠長にしゃべってる……


あの無口なあいつが。



衝撃的な光景だった。


『これからも、みんなの心に響く歌をうたっ…』



ん?



『…唄っていこうと思う、応援してくれ!』



今、噛んだ?



そう言って彼らはステージの袖に消えていった。



でも……さっきのは、噛んだというより一瞬止まったように見えたな。



しかも、なんか目が合ったような……。



「すごかったですね~先輩!」


「若い子のパワーってすごいね……耳が痛いよ。」



「でも、気付いてましたねジン。」



「えっ?」



「こっち、見てましたよ。」


えぇっ!?



「一瞬止まってたし!動揺してたんですかね?」



あいつ、私がいる事に気付いたのかな……。



なんか、余計気まずいなぁ。