「…はぁーどっかからイケメン降ってこないかなー」


く…くるかぁ!



例のサーファーの彼氏と別れて以来、若菜ちゃんはすっかり恋愛から遠ざかっていた。



パックを剥がし終えると顔を洗いに洗面台へ行く。



私はあまり深く踏み込まれるのが恐くて隣の部屋に着替えに向かった。


……いつまでもここにいるわけにいかないしなー。



住む所探さなきゃな。



ジャージに着替えてリビングに戻ると、ソファーにもたれ掛かりながら虚ろな表情でテレビを見ている若菜ちゃん。



か……顔がヤバイからっ。


恐る恐る反対側のソファーに座る。



すると、途端に若菜ちゃんの顔がぐしゃぐしゃになった。



えっ……



何?



なんで泣くの!?


慌てた私は若菜ちゃんの顔を覗き込んで確認する。



「どっどしたのよ!?」



「せんぱぁーい……」



若菜ちゃんの目から大粒の涙が溢れた。



「ちょっ…なんで泣くの!?」



若菜ちゃんの横に腰掛け、背中を摩った。



「先輩、私……私……」



「うんうん……」



ぎゅっと私の手を握る。



「ケンちゃんの事忘れられないんですっ……」



えっ…



思いもしなかった言葉が出て来た。



「ケンちゃんと別れて、ヒデちゃんと付き合うようになって…ちゃんと気持ち切り替えられたと思ってたんですけど…シクッ…シクッ」



涙を流しながら、肩を震わせる彼女を見てそれが冗談ではないんだという事がわかった。



「……でも、ヒデちゃんと別れた途端、頭に浮かぶのはケンちゃんの顔で……」



「若菜ちゃん…」



「テレビとか雑誌とかで顔見る度に……どんどんダメで、昔の気持ちが蘇ってきて…」



私はただただ頭を撫でてあげる事しかできなかった。



仁と別れた自分は、若菜ちゃんの為に何もしてやれない…



それが歯痒い。



そして、会いたいと泣きじゃくる彼女を見て、とても他人事には思えなかった。