夜9時過ぎ、若菜ちゃんのマンションに帰った。



「ただいまー…」



少し気疲れしたせいか、重い足取りでリビングへ入ると、点けっぱなしのテレビの前で不気味に緑色の顔がこっちを振り返る。



「おかえりなさぁ~い。」


きっ…!!



「きゃ~っ!!」



思わず悲鳴を上げる。



「せんぱぁーい、私ですよぉ。」



え、えっ…



目を懲らしてよくよく見ると、顔面に緑色のよもぎパックをした若菜ちゃんだった。



恨めしげに私を見ている。


「なっなにその目は!……ってかさぁ、緑のパックはよしなさいよっ…」



「ひどいですよ先輩!一緒に帰ろうって約束したのにぃ。」



パリパリの顔のまま私の背中にしがみついてくる。



なんだ、ドタキャンしたことを怒ってるのか。



「ごめんごめん、ちょっと友達と食事してきた。」



「とかなんとか言ってぇー本当はジンと会ってたんでしょ~!」



「ちっ違うよ!そんなわけ……ないじゃん。」



“だったら、よかったな”



……なんて、心の片隅でぼやいてしまった。


ソファーに座り、むくんだ足をマッサージする。



若菜ちゃんはその緑の顔で私の足元にしゃがみ込み、気色悪い上目使いで私を見る。



「まさかぁ~…」



「えっ?」



「もう新しい男ですかぁ~!?」



涙目でそう訴える。



「なっ何言ってんの!」



「……先輩大して可愛くないのにイケメンばっか寄ってくるんですもん。」



おいお~いっ!



今のはサラーっと聞き流そうと思ったけどかなり引っ掛かるんですけど。



若菜ちゃんは、テーブルの方へくるっと向きを変えてスタンドミラーを覗き込みパックの渇き具合を確認する。


「だってほら、今朝のエレベーターのイケメン君も…」



ドキッ!




ペラペラと気持ち良さそうにパックを剥がし出した。