「昨日の今日なのに、もう寂しくて…たった一日声が聞けなかっただけで泣きそうになる。」



私、何言ってるんだ……。



「先輩…」



「心のどっかで仁も同じだったらいいなーなんて……思ってるバカな自分がいてさ…」



気がつけば、泣きながら笑っていた。



何やってんだろ。



こんなこと言おうとしたんじゃないのにな……。



「……いつか来るかな。」


「え?」



「……仁を忘れられる日が、あぁーそんな事もあったなぁって笑える日が……」


「……来るかな。」



ボロボロの顔で桜井君にそう聞いた。



彼は、一時も目を反らさずテーブルの上にあった私の手をぎゅっと掴んだ。



“ドキッ…”



「俺が忘れさせたる。」



えっ……



びっくりした。



その眼差しがあまりに真剣だったから。



桜井君の大きくて温かい手が、私の涙に震える手を掴んで離さない。



「……俺が先輩の彼氏になって、仁の事思い出す暇もないぐらい毎日毎日そばにいて、そんでいつか絶対先輩の全てになって……」



「……桜井君。」



桜井君は何故か悔しそうに下唇を噛み締める。



「だからっ、だから……。あぁ~っなんかっうまく言えへん。」



私の手を離し、頭をぐしゃぐしゃと掻いた。



その仕草が仁に似ていて、


仁とだぶって見えて……



また涙が出た。



こんなにも言ってくれているのに、そんな目で見るなんてひどいよね。



自分でもコントロールできないぐらい仁の存在は大きかったんだって思い知った。