昼休み――



もう一人、ちゃんと報告しなきゃいけない人がいる。



エレベーターで屋上へ向かった。



「弘人。」



風の音に掻き消されそうな声でそう呼んだ。



「おぅっ!」



久々に見た弘人の笑顔。



私は重い足取りで弘人の座るベンチの横に腰掛けた。


ジリジリと照り付ける太陽の熱が肌を焦がす。



どこからともなく、せみの鳴き声聞こえる。



「すっかり夏だな~。」



弘人は眩しそうに太陽を見上げた。



「うん。」


そのまま横にいる私に視線を落とすと、弘人は私にこう聞いた。



「なんか、相談か?」



「えっ」



ビックリした。



「なんか元気ねーし、千秋が収集かけんのも珍しいからさ。」



元カレにまで見抜かれていたなんて……。



私は、昨日の出来事を弘人に話した。



「……そういうわけなんだ。」



「えっ……じゃーもう、仁とは会わないのか?」



「……うん。」



「お前それで平気なのか?」



「……うん。」



私の横でハァーと深く溜息をつくと立ち上がりフェンスの方へ歩き出す。



「相変わらずわっかりやすい性格だなぁ。」



「え?」



「元カレを見くびるなよ!」



弘人……。



「つぅーか……同じ事の繰り返しだな。」



ドキッとした。



どこかにあった自分の本音を弘人があっさり口にした事に。



「まぁ、俺が偉そうに言える立場じゃないけどさ、どっかで納得できない自分がいるなら……。そこで諦めんのもどうかと思うけどな。」



弘人はフェンスにもたれ掛かりながら鋭い上目使いで私を見た。