「仁さんだって千秋に支えられてた部分たくさんあるだろうし、お互いがお互いを必要としてるのになんで……。」



《うわぁーん!うぁーん!》


その音で和室で寝ていた睦月ちゃんが目を覚ました。


晶子は悔しそうな表情で立ち上がり、和室の方へ向かう。



晶子が納得できないのも無理はない。



私自身、まだ納得できていないんだから。



でも……



仁がずっと追い掛けてきた夢を、



目指して来た道を“私”で無駄にしてほしくない。



今強くそう思っている。



「千秋は……」



振り返ると、胸にまだ眠そうな顔の睦月ちゃんを抱いた晶子が立っている。



「千秋は、ずるいよ。」



「えっ……。」



「ただ、傷つきたくないだけじゃない。自分がそばにいる事で仁さんの仕事がうまくいかなくなったら嫌だから、…だから離れた。……私にはそう聞こえる。」


晶子……。



「そんなの素直じゃないよ……お願いだから…」



「お願いだから、自分に嘘はつかないで。」



「……。」



私は言葉を失った。



晶子は睦月ちゃんを抱いたまま床に座り込む。



「未来は二つだよ。」



え……



「“仁さんのいる未来”と……“いない未来”。」



「……。」



急に胸が締め付けられた。


寂しさがじわじわ込み上げてくる。



「千秋は今、後者を選ぼうとしてるんだよ?」



“仁のいない……未来”



それがどんなものか、今の私には想像もつかない。



耐えられるだろうか……。


今までと変わらず笑って生きていけるだろうか。