先に来ていた仁の正面に無言で腰掛ける。


仁は不機嫌そうにコーヒーに手を伸ばす。


一口飲み終えると、私にある質問をした。


「お前昨日どこに泊まったんだ?」



「えっ…」



言葉に詰まり目を反らした。


「……っていうか、あの記事はデタラメだからな。写真があったから言い訳しないけど、あの日確かに途中でさくらが来てメンバーとみんなで飲んだ。そしたらさくらがここでは話しにくい相談があるって言うから表の車の中で話してたんだ。それをあんな形で撮られただけで……その後どっかに消えたなんて嘘だし、そのままウトウトしちまって気がついたらもう朝だったんだ。」



仁は息付く暇もないくらい、饒舌に喋り続けた。


「で……でも、無言電話。」


「無言電話?」



「その前の日に私の携帯に仁の携帯から電話があって……でも何も話さなかった。あれは仁じゃないでしょ?」


「俺、もう何日も前から携帯なくしてたからな……。」


「仁がさくらのマンションへ行ってないとしたら、どうしてさくらは仁の携帯を手に入れることができたの?」


「だからっ…俺もさっぱりなんだって。てっきり事務所に忘れたんだと思ってたらあいつが持ってて……」


「事務所……。」



「え?」



「そうだ……事務所だよ。」


「は?」



「事務所の誰かがさくらと手を組んでやったのかも。」


「手を組む?…わざわざ自分の所のタレントを売るような事しないだろ。あんだけスキャンダルに気をつけろって言ってたんだし。」


「相手によるのよ。」



「あ?……どういう事だ?」


「さくらと噂になれば、話題にもなるし、プラスになる。うまくいけば私とも別れる事になるかもしれない……そう考えそうな人がいるじゃない、一人。」



「……佐田さんか」



「そうよ、きっとそうに決まってる。」



私たちはその足で事務所へ向かった。