ハンガーにかけられた渇いた服に着替え、玄関に立った。


ここへはたぶん……戻らない。


一番甘えちゃいけない場所なんだ。


まだ少し汚れたままの白いパンプスを履き、部屋を後にした。


仁とちゃんと話そう。


そう思い携帯に電話をした。


プルルルル…プルルル…



ガチャッ…



「……仁?」



「おう。」



その声に胸を撫で下ろした。


「携帯返してもらったんだね。」


「あぁ。」


「会ったの?……さくらと。」


「会った。」


ズキッ…


そうなんだ。



「会って文句言って来た。」


「え?」



「つぅか、今どこだ?」


「今っ……今から会える?」


「ったりめーだろ!誤解されたままじゃ気分悪いってんだよ。」


仁は怒鳴り付けるような勢いでそう言った。


人目に付きにくいある喫茶で、待ち合わせる事になった。