「はぁ?ちゃんと話し聞けよ!」


「聞きたくないよ、何も。」


トボトボと歩き出す。



「っ待てよ!そっちじゃねーだろ。」


仁は慌てて駆け寄り私の腕を強く掴んだ。



「とにかく今日は遅いから帰っ……」



言いかけた仁の動きが止まる。



私の横顔があまりにボロボロで、言葉もでないという感じだった。



「触んないで。」



「……。」



“パッ……”


私は腕に張り付く仁の手をゆっくり払い退けた。


仁は固まったように動かなかった。


歩き出す私に仁は慌てて口を開く。


「おっおい!どこいくっ……」


「いれないよ……。」



「……。」


「一緒にはいれない。」


呆然と立ち尽くす仁に背を向けてそう言った。



「ごめんね、仁。」



そしてまた、力の抜けた体で歩きだした。



「……なんで」



仁が何か言っている。



でも、その言葉さえもう私の耳には届かない。



「なんでお前が謝るんだよ!」