「……っねぇ、今の話しもうおしまい?」


「……。」


仁はただ黙って正面を見たまま微笑んでいる。


なっ何!?
なんだったの今のフリ。


そこからこうプロポーズ的な流れに……なるんじゃないの!?……普通。


期待はずれだった私は少しふて腐れてまた寝転んだ。


すると仁はググッと伸びをして立ち上がると振り返りもせずこう言った。


「いつか来るかもな、そういう日が。」


「……。」


ん…?


また閉じた目を見開いた。


えっ……今なんて!?


いつか来るかも!?


波の音に掻き消されそうなくらい小さな声だったけど確かに仁はそう言った。


私は勢いよく起き上がる。


「よし!もう一泳ぎしてくっか!」


「…ちょっちょっと!」


“ガシッ!”


そう言って去ろうとする仁の足にしがみつた。


「わっこら!離せ!危ねぇだろ!」


「なっ何今の!?もっかい言って!」


「知るか!」


「だっだって、波の音でよく聞こえなかった!」


「じゃー何も言ってない。」


「あぁ~ずるい!!」


「っつうか……」


「んっ?んっ?」


物凄くキラキラした目で仁を見つめる。


「お前、実は結構……」


「うんっ?」


「幼児体形で笑える。」



へ?



「さっ、泳ぐぞ!」


「ちょっ!!」


なっなんだと~!!


「待てコラァ!」


海辺へ駆け出す仁を追い掛けた。


ほんっとムカつく!!


あ~ぁ。
でも、さっきちょっと“うん”って言えばよかったと後悔。


仁の子供産みたいって……。


言ってたら、仁はどんな反応をしたのかな。


普段甘いことを言わない仁だから、飾り気のない言葉が新鮮でめちゃくちゃうれしかった。