私は言葉を失った。


受話器から女性の声がする。


そして、その女性は電話の向こうで眠そうにこう言った。


『んっんー…ジン…電話ぁ。』


《……あぁ？》


その瞬間、心臓の鼓動が速まった。


電話の向こうで聞こえたもう一つの声。


間違いなく仁だった。


私は怖くなって電話を切った。


閉じた携帯を握り締める手がガタガタと震えた。


仕事じゃない。


仁は女と一緒にいる。


しかも朝帰り。


どういうこと？


今のは誰？


どこにいるの？


段々私の頭はパニックになり始めた。


パジャマ姿で部屋を行ったり来たりしている私を不思議そうにタマが見ていた。


もう一度電話をかける勇気さえ沸いてこない。


冷静になってもう一度考えてみる。


もしかしたら、周りに他のメンバーもいたのかもしれない！


もしかしたら、事務所の女性だったのかも！


朝から仕事で楽屋で仮眠中だったのかも！


でも……


明らかに二人は寝起きの声だった。


いくらなんでも、仕事場で女と一緒に寝るなんてこと……ないよね。


頭の中がぐちゃぐちゃになった。